FATAR ファクトリー潜入レポート! 第2回:Studiologicの誕生

先週に引き続き、イタリアから良質なキーベッド(鍵盤ユニット)を世界中に送り出しているFATARのストーリーをお送りしましょう。
前回はFATARの創業から世界一のキーベッド・メーカーの地位を確立するまでを紹介してきましたが、今回はFATARの「今」を知る上で欠かせない「Studiologic」をテーマにお送りします。

昨今、ステージ・ピアノやMIDIキーボードのカテゴリーで目にする機会も増えてきたStudiologicですが、実はFATARの展開するブランド。自社製品やStudiologicに込められた想いを、引き続きCEOのMarco Ragni氏直々に伺っていきます。

【これまでのレポート】

現CEOのMarco Ragin氏は2代目。大学では電子工学を専攻し、卒論テーマは「Sound Synthesis」だったとか…。卒業後は別の会社でエンジニアとして勤務した後、FATARに合流したという経歴の持ち主です。


MIDIコントローラー・キーボードのパイオニア

 

Marco:キーベッド専門のメーカーとしてスタートしたFATARですが、楽器メーカーにキーベッドを納入するのに並行し、オリジナルの製品も作ってきました。我々の初めての製品はNOVEL(ノーベル)というブランド名で1984年に発表した「MUSIC 64」というCOMMODORE 64(※)用のMIDIキーボードとソフトウェアのバンドル製品です。当時はパソコンの黎明期で、音楽とパソコンを組み合わせて使うということがまだ珍しかった時代。今で言うMIDIキーボードもほとんど存在していませんでしたから、とても革新的な製品でした。

※1:1982年にコモドール社が発売したホーム・コンピューター。モデル名通り64KBのRAMを搭載し(当時としては画期的)、比較的安価だったことから販売終了までに1,700万台を売り上げる大ヒット・モデルとなりました。なお、単一モデルとして最も販売台数の多いコンピューターとして、その記録は未だに破られていないようです。

1986年にはFATARのブランドで「STUDIO 88」というマスター・キーボードをリリースします。楽器として真面目に作られた本格的なモデルでした。
その後、1998年になるとAppleのiMacが世界中で大ヒットします。iMacはスケルトン・ボディーとカラフルなカラー・バリエーションが特徴でしたので、そのデザインにマッチするようなカラー・バリエーションを備えたMIDIコントローラー「STUDIO 49」をリリースし、好評を頂きました。

楽器として信頼できるMIDIコントローラーと同時に、その時代のトレンドに合った製品を作り続けてきました。

当時はヨーロッパでもアメリカでも、純粋なMIDIコントローラーを作っているブランドはまだ少なく、それもあってFATARのマスター・キーボードは多くの方にお使い頂くことができました。しかし同時に、FATARのキーベッドを採用している楽器メーカーから不満の声も聞こえてくるようになりました。それはそうですよね。同じブランド名で競合する製品を作っているのですから…。そこでFATARブランドではなく、新たに別のブランドを立ち上げることになったのです。


Studiologicの誕生

Marco:そうして2001年に生まれたのが「Studiologic」ブランドです。「SL-880」や「SL-1100」というモデルをリリースしたのですが、それまでのブランド名を捨て、新たな名前で再スタートするのは簡単なことではありませんでした。販売台数は奮わず、次第に積極的な開発も行われなくなっていきます。

有名楽器メーカーで豊富な経験を積んだ専門スタッフが集結。Studiologicは各部門のプロの手によって作られています。

 

そんな状況を打開するため、ブランドの再起を計ってロゴの変更や、チームの再編などの大改革を行いました。GeneralMusic(※2)やFarfisa、ROLI、Roland、KORGといった著名な楽器メーカーで経験を積んだプロフェッショナルなスタッフが集い、その結果、我々らしい独自性を持った製品作りに成功します。

スタッフの経験とアイディアによって生み出されたnumaシリーズは、瞬く間に市場に受け入れられていきました。

 

それが2008年〜10年に発表した「numa piano」や「numa organ」といったNUMA(ヌマ)シリーズです。FATARとして初めて音源を内蔵した「楽器」であり、同時に色々な革新的な機能や技術が搭載されていました。それらが認められてMIPA(ミパ)アワード(※3)を受賞することができたのです。

お陰様でnumaシリーズは多くのミュージシャンの方にお使い頂けるようになり、ブランドとして急成長を遂げています。実は世界でもっとも伸びているのが日本なんです。昨年は遂に我々の生産が追いつかない程になってしまい…。お待たせしてしまい大変申し訳なく思っています。

※2:かつてイタリアに存在していた楽器メーカー。GEMの愛称で親しまれ、ステージ・ピアノで高い評価を得ていました。
※3:その年のMusikmesseで、世界中のプレス関係者から優れていると評価された製品に与えられる賞


ブランドの躍進と、今後の展望

Marco:我々の製品は、音源を内蔵した「numa」シリーズと、純粋なMIDIコントローラーの「SL」シリーズに大きく分けることができるのですが、どちらも高い評価を頂いています。
例えばヨーロッパの大手通販サイトThomanの88鍵マスター・キーボード・カテゴリにおいて「SL88 Studio」がトップ、「SL88 Grand」が4位とダブル入賞している状態です。一例ではありますが、市場において最も価格と品質、機能の面で最もバランスの取れた製品であると確信しています。

最高の鍵盤タッチと操作性をコンパクトに実現したSL88 STUDIO

製品の詳細はこちらから

ここ数年で、Studiologicの名前を多くの方に知って頂くことができたので、ここから次のステージとして、さらに製品の品質を高めている最中です。残念ながら現段階では詳しくお話できませんが、新たな音源や技術を開発中ですのでご期待ください!


Studiologicの名前の由来は?

Marco:特別に隠された意味はないんですが…(笑)。2001年に新たなブランドをスタートさせようというタイミングで、アメリカの代理店から「Studiologicはどう?」という提案があったんです。StudioとLogicはどちらも言葉の意味として印象が良く、その2つを組み合わせるのも面白いんじゃないか…と。どちらも英語ですが、イタリア語にこだわっても広がりがないという狙いもありましたね。

そのかわり…というのではありませんが、製品名はイタリアらしさを盛り込みました。製品名にあるNumaというのは、Numana(ヌマーナ)というこの近くにある地域の名前から取っています。地域とのつながりを大事にしたかったんです。どうやら日本語で「沼」はあまり良いイメージがないということですが…Numanaはとても美しい地域なんですよ(笑)。


ファクトリー見学の前の導入編…ということで、FATARの設立から現在、Studiologicに至るまでの歴史をお届けしてきましたが、いかがだったでしょうか?
Marco氏を始めとしたFATARスタッフとの会話の中で強く感じたのは、土地や伝統に対するリスペクト。FATARのファクトリーがあるイタリアのレカナーティは、昔からアコーディオンが盛んな地域で、未だに楽器といえばアコーディオンが1番人気(ちなみに、次いでオルガンが人気)なのだとか。アコーディオン、オルガン、ピアノといった鍵盤楽器に対する想いも強く、それが製品作りにも大きく反映されているということを感じることができました。

次回からは遂にファクトリーに潜入! 鍵盤製造の裏側に迫ります!

最後におまけ。インタビュー内でも出てくるNumaシリーズの名前の由来でもある「Numana」の風景をご紹介します!

Numaの由来になっているNumanaの風景。とても美しい港町です。

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